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不妊治療で知りたいことがあれば、下記の【Q】をクリックしてください。この中にない質問は『専門医が答えるわかる不妊症Q&A』保健同人社刊、佐藤芳昭・本間由美子著をご覧ください。

Q51:レーザーによる不妊治療について

Q50:自然周期採卵について

Q49:ICSIより進んだIMSI法とは?

Q48:胚培養士とはどんな事をするのですか?

Q47:ヒューナテストの意義について

Q46:最近不妊治療にDHEAというサプリメントが良いと聞きましたが?

Q45:最近、高年齢の治療例が多いとのことですが、その成績は?

Q44:姉妹間での卵移殖による妊娠があると新聞で見ましたが?

Q43:体外受精で生まれた子供の追跡調査をするそうですが?

Q42:最近、男性不妊の新しい薬物療法がありますか?

Q41:胚移殖数が制限されるそうですが?

Q40:リコンビナントホルモンが使用可能となったと聞きました。

Q39:Pillによって良質卵を得る方法があるとのことですが教えてください。

Q38:公的不妊治療補助がかわったようですが?

Q37:フェマーラ(レトロゾール)での排卵刺激法とは?

Q36:男女産み分け法について教えてください

Q35:喫煙は体外受精にどんな影響を与えますか?

Q34:受精卵診断が認められたとの事ですが?

Q33:受精卵診断はなぜ必要なのですか?

Q32:レーザー顕微授精装置とはなんでしょうか?

Q31:喫煙と不妊の関係は?

Q30:不妊に伴うインシュリン抵抗性とは?

Q29:特殊不妊治療に対する公的補助は?

Q28:不妊症の予防はできますか?

Q27:不妊治療中に日常生活で女性側が気をつけることがありますか?

Q26:血のめぐり(血流)と不妊症は関係ありますか?

Q25:不妊治療に良いサプリメントはあるでしょうか?

Q24:GnRHアンタゴニストという注射薬が体外受精に有効とのことですが?

Q23:ICSI法でも受精しませんでした。何か方法がありますか?

Q22:女性へバイアグラを使用する治療法があると聞きましたが?

Q21:最近話題になったOTU法とはどんな方法でしょうか?

Q20:クロミッド周期採卵法について

Q19:ニ段階胚移殖法について教えて下さい。

Q18:着床の窓とは何でしょうか?

Q17:不妊治療は自費と言いますが、どの位なのでしょうか?

Q16:最新の不妊治療について教えて下さい。

Q15:卵子若返り法とはどんなことでしょうか?

Q14:トランスポートARTについて

Q13:不妊治療に伴う副作用を教えてください。

Q12:睾丸よりの直接精子の回収法について

Q11:女性の年齢と不妊との関係は?

Q10:不育症又は習慣性流産とは?

Q9:Assited Hatching(AH)とは何でしょうか?

Q8:最近話題の「胚盤胞移殖」とはどのような事?

Q7:高度生殖医療について説明して下さい

Q6:最近よく耳にする受精障害、着床障害とは?

Q5:受精卵や精子の凍結保存法とは?

Q4:AIHは何回まで行うことができますか?

Q3:人工授精(AIH)と体外受精(IVF)の違いは?

Q2:人工授精(AIH)とは?

Q1:不妊の検査治療はどのように行われますか?



Q1:不妊の検査治療はどのように行われますか?
過去に妊娠の経験があるか否か、年齢や治療歴にもよりますが、
一般的には次の3大原因のチェックから行われます。


(1)卵巣の働き(排卵や、排卵後の機能など)がうまく行っているかどうか(ホルモン検査や基礎体温「BBT」)

(2)子宮の形や卵管の通過性、腹腔内の癒着の有無など(子宮卵管造影「HSG」によるチェックなど)

(3)男性因子(精液検査、男性ホルモンのチェックなど)


 これらの異常がなくても、更に子宮内膜症、性器感染症、免疫的原因などが必要に応じて検査されます。

 特徴的なのは夫婦をカップルとしてチェックする必要のあること、検査と治療が平行して進行することなど、一般の病気とやや異なるところがあり、女性の排卵が一ヶ月に一度のため、ある程度の期間が必要であることを念頭においておきましょう。

 又、治療の原則は時間とお金のかからない方法より順次進めてゆくこと(ステップアップと言います)です。




Q2:人工授精(AIH)とは?
 通称人工授精(AIH)は、以前より不妊症の大切な治療法として行われ、現在もその価値は失われておりません。ただし、妊娠率を向上させるためにその方法は次に挙げるように変化してきております。子宮腔内に直接注入する方法(IUI)がAIHの中でも、最も確実な方法の1つと言われています。


(1)以前は精液そのものを子宮経管内や子宮頚内に注入しましたが、今では、パーコールという細胞分離液で元気な運動精子のみをとりだして、子宮腔内に注入します。それにより、感染や腹痛を防ぎ、受精能を持った精子がたくさん卵管の受精の場に到着しやすくなるようにします。

(2)人工授精を成功させるには、排卵のタイミングにできるだけ正確に合わせることが大切といわれております。そのために、クロミッドやHMG製剤(注射の卵胞刺激ホルモン)を組み合わせて用いながら、経腟式エコーで卵胞の発育を観察してそのタイミングを正確に合わせます。

※注意・・・HMG製剤は、閉経後の女性の尿中に含まれる性腺刺激ホルモンを特殊な方法で抽出し精製したもので、製剤そのものの副作用はほとんどないですが、使い方を間違うと卵巣過剰刺激症候群という合併症が起こることがあります。妊娠率を上げるために、あせって多めに使用すると危ないので、当院ではそれぞれの患者さんに状況に応じて適切な投与を心がけております。2007年4月より、より純粋なr-FSH(フォリスチム)が使用可能となっています。


・・・IUIの適応患者は・・・

(1)夫の精子数の少ないか、運動率の低い夫婦
(2)ヒューナー試験(頚管粘液と精子の相性)の悪い夫婦
(3)不妊の原因ははっきりしないが、治療が成功しない長期不妊の夫婦(原因不明不妊症)
(4)性交が出来ない(性交障害)


・・・AIHを繰り返しても、妊娠の成立を見ない時には・・・

(1)受精障害(卵管、精子、卵そのものに機能的な異常がある又は卵と精子の相性が悪いと考えられる不妊)
(2)着床障害(子宮内膜や、卵の着床力に問題のある場合)
(3)卵管に機能的障害が隠れている時
(4)腹膜に軽度の子宮内膜症が存在して、受精の邪魔をしているとき

などがあり、腹腔鏡検査や夫婦間での体外受精で受精の有無を確認する必要が出てきます。




Q3:人工授精(AIH)と体外受精(IVF)の違いは?
 AIHは古くから行われている方法で、出来るだけ多くの精子を卵に到着させることを目的としています。まず不妊治療の第一段階として行われることが多いですが、子宮内から卵管までの経過は自然妊娠の場合と同様に進行するので、卵管通過障害などの女性因子がないか、治療が可能なことが前提となります。

 方法は女性の排卵日を適確に推定して、男性の精子より元気な精子のみを取り出して(パーコル法や、swim up法など)、子宮腔内にタイミング良く注入してやる方法です。

 IVFはこれとは全く異なり、最近に急速に発達した高度生殖治療であり、体外に取り出した排卵直前の卵と精子を培養器の中で受精・分割させてから子宮内に戻して着床(卵が子宮内に付着すること)を待つ方法であり、卵と精子を24〜48時間体外で培養する方法で、高度な技術と経験が必要です。最近では体外で5〜6日培養を続けてから子宮に戻す胚盤胞移殖(Q8参照)も行われております。




Q4:AIHは何回まで行うことができますか?
 AIHの施行回数に関しては、現在では多くの施設では、以下のように考えられております。すなわち過去の経験から 6−7回を過ぎるとその累積妊娠率は増加しないことが判明しており、その場合にはAIHのタイミングが合っていれば、卵、精子、受精の環境などに異常のあるいわゆる受精障害の形を取っているものが少なくないと思われます。

 この場合には、その不妊原因が単に男性の原因だけではなく、女性の因子を合併している可能性があり、腹腔鏡などを行うか、体外受精などのいわゆる生殖技術を用いた方法での確認が必要となります。また10回、20回とAIHを行うと、免疫抗体である坑精子抗体が出来てしまうこともあり、途中で中断して再開する事も考えます。




Q5:受精卵や精子の凍結保存法とは?
 体外受精では通常複数個の受精卵が得られますが、子宮内に戻す個数は3ヶ位までで、余剰の卵については、特別なフリーザーで凍結保存することが可能で、しかも長期間の保存も出来ます。従って従来のように余った卵を破棄することなく、1回目のIVFで失敗した場合や、卵巣過剰刺激症候群で胚移殖を見送った周期に凍結し、条件のよい時に移殖する事も可能であり、経済的にも身体的にもきわめて有用な方法です。又最近ではガラス化法という簡便な形の方法で、胚盤胞の凍結保存も可能となってます。

 次に精子の凍結は、卵の凍結より容易で、海外出張の多い方とか、1回の採精では十分な精子の採取が不可能な方などに用いられます。又、直接睾丸から採取した精子の凍結保存により、数回に分けてICSIに利用することも可能となってきました。

 いずれにしても凍結技術の進歩は、患者さんにとって大きなメリットとなっております。




Q6:最近よく耳にする受精障害、着床障害とは?
受精障害について・・・

 最近精液検査で形や数、運動能は正常で、排卵もあって、AIHをくりかえしても妊娠しない症例の中に、いわゆる受精障害といわれる病態があります。

 精子の輸送や、卵の取り込みなど卵管の機能異常などが原因のひとつとして、考えられています。更には精子または卵そのものの異常が考えられます。

(1)卵管の異常については、癒着、感染症、免疫抗体の関与、軽い子宮内膜症によるものなどの問題点があります。

(2)卵自体の異常としては、卵の透明帯や細胞質、ときには染色体の異常などが原因としてあることが判明しております。

(3)精子については精子の頭部の酵素異常などの機能障害が問題となります。

 これらのいわゆる受精障害は、 体外受精を実施する事によって判明してきた事実ですので、長期の不妊(原因不明不妊症や、AIHで成功しないような方)は、一度IVFを試みて受精障害の有無について検討することも必要です。IVFでは、卵そのものの形態の良し悪し、受精の有無、その後の分割などに異常が無いかなど、通常の検査では行えない検査的治療が可能です。

着床障害について・・・

 現在もっとも治療の困難なのがこの着床障害です。着床の場である子宮内膜側の条件として黄体ホルモン(プロゲステロン)の異常によるものが多いと考えられ、ホルモン補充療法がおこなわれ、その妊娠率は48%ぐらいです。

 子宮そのものに原因のある場合(子宮筋腫、子宮内癒着、子宮内膜炎などの感染、子宮奇形、子宮腺筋症など)はそれらの原因に対する治療が必要となることがあります。

 また、良い受精卵ほど十分で着床因子(糊のようなもの)を出しながら子宮内膜に向かいますので、良い卵を排卵させることも前提条件となります。通常の体外受精で妊娠しない例の中には、多くの着床障害が存在すると考えられており、胞胚期と言われる細胞分裂がかなり進んだ段階での移殖や、卵に穴をあけて着床させやすくする方法など(Q9参照)が試みられています。




Q7:高度生殖医療について説明して下さい
 1978年に英国でヒト体外受精・胚移殖による妊娠の成功以来、高度な技術的な発展があり、これ以来開発されたヒトに対する生殖技術(ART)のことです。

この中には、GIFT法(配偶子卵管内移殖)や体外受精(IVF法)などが含まれ、最近は顕微授精が、重症な男子不妊を中心に行われています。顕微授精もSUZI(囲卵腔内精子注入法)から、現在ではICSI(細胞内精子注入法)へと変わり、これによれば理論的には一匹の精子と一個の卵があれば受精妊娠が可能となります。

ICSI法の瞬間
当院でのICSI法の瞬間



Q8:最近話題の「胚盤胞移殖」とはどのような事?
 現在では、採卵後2日間の培養後胚移殖していますが、子宮内膜との関連より見るとやや不自然であり、5日間の培養法が最近では行われつつあります。
5日間培養すると受精卵は、桑実胚、または胚盤胞という着床寸前のところまで分割しております。勿論培養条件などが、難しくなるので全例には行える方法ではありませんが、3−4度の体外受精にても妊娠の成立を見ない場合には、試みてもよい方法です。当院でもこの方法が可能ですので、医師とよく相談してみましょう。

其の他体外受精を繰り返しても妊娠できない例では

(1)良好な胚がすくない(高齢や卵巣の反応が悪いなど)

(2)着床条件が良くない(子宮内膜が薄い、内膜炎があるなど)

(3)黄体機能不全(黄体ホルモン分泌に問題がある。)

など多くの問題が未解決にありますが、卵側の条件を良くする一つの方法として、この胚胞盤移殖はもっとも新しいやり方で、当院にても11年7月より行っており多数の妊娠例があります。




Q9:Assited Hatching(AH)とは何でしょうか?
 卵の透明帯が厚く、最終的に卵が孵化できない場合にあらかじめ透明帯を薄くするような加工をしておくことで、数回のIVFで卵が着床しない場合や高齢者の卵、凍結卵の一部などに行われます。
体外受精・胚移殖などの最新の生殖医療を希望される方への項に説明図があります。)



Q10:不育症又は習慣性流産とは?
 子供を望む親にとって流産は悲しい出来事で、流産のリスクは12〜15%と言われるが、3回以上連続して流産する(習慣性流産)のは0.4〜0.8%に上ってます。原因は遺伝性疾患(50%)、糖尿病などの内分泌疾患(15%)、子宮の奇型など(10%)、免疫異常(10%以下)などと考えられます。
 治療は原因が判明すれば、その治療を集中的に行いますが原因が判らないときもあります。特に自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、夫婦のHLAの相同性、抗精子抗体などがあります)はアスピリン低用量又はステロイド投与で成功することも、まれではありません。
 また、喫煙、アルコールや薬物乱用も原因と考えられ、ライフスタイルを考え直すことも重要です。



Q11:女性の年齢と不妊との関係は?
 25才以下の女性の場合、妊娠するまでに要する期間は2〜3ヶ月と言われ、35才以下では平均6ヶ月かそれ以上かかります。
 AIH(IUI)などの精子操作をした場合も25才以下ですと、1回当たりの妊娠率は11%位ですが、35才以上では6.5%位となります。又、実際に当院での体外受精の成績より見ると34才までの妊娠率は31%、35〜39才では19%、40才以上では8%と明らかにAIHよりは良好なものの、年令による差は歴然としており、その意味では女性年令が若いうちの治療が望ましいということになります。37才以上では積極的にARTの利用を考えましょう。



Q12:睾丸よりの直接精子の回収法について
 現在MESA(顕微鏡下精巣上体精子吸引法)とTESE(精巣精子回収法)が当院では行われております。
 MESAは睾丸上部の精子の通り路から精子を回収する方法であり、より成熟した精子が回収しやすいが、採取できる部位が限定されます。
 一方TESEでは睾丸から直接の回収のため、未熟精子が多いとの欠点はありますが、繰り返し行え、又、顕微受精を併用すれば一匹の精子と一個の卵で妊娠が可能となります。TESE、MESAなどは、当診療所と共同診療の泌尿器医が男性より採取(ましもクリニック:同一ビル内または大船中央病院:岩本晃明教授)で行い、直ちに当院センターにて施行できます。



Q13:不妊治療に伴う副作用を教えてください。
 一般的に不妊治療により生命に関する副作用が発生することはほとんどありません。しかし時には十分な管理がされないと危険ことも少なくなく、副作用について知ることも大切です。

(1) 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
 一般的な治療より体外受精(IVF)では多量のHMG(卵巣刺激ホルモン)を使用するために、数多くの卵が発育し、採卵後に卵巣腫大、脹れなどの発生をみて、入院治療が必要となることもあります。発生しやすいのは比較的若年で痩せ型の人に多く、又、20ヶ以上の卵胞発育のある場合などで、早めに管理をすれば補液のみで治療できますが、時に入院管理が必要で、入院は当院の協力クリニックで必要時に行います。

(2) 多胎妊娠
 近年は品胎(3胎)の発生が、20年前の4倍と言われ、これの原因の80%は排卵誘発剤とIVFの結果と言われております。出来るだけ少しの卵を移殖すれば防げますが、当然妊娠率は下がってきますので、相反するジレンマであり、現状のところ日本産婦人科学会では1回あたりの移殖数を3ヶまでにするよう指導しています(下図参照)。2007年4月より日本生殖医学会では35才未満の方には1ヶの良好卵移殖(SET、SBT)をすすめており、今後は受胎予防のため、この方法が全国に拡がると考えられます。当院でも2007年9月より積極的にSET、SBTを行っております。

移殖卵数と妊娠率


(3) 流産の発生
 通常の妊娠でも10〜15%は流産となりますが、IVFなどの治療後では施設により異なりますが15〜25%の流産があると言われております。これはもともと妊娠しにくい体質の方が妊娠することや、年齢的に高齢となって妊娠することなどと関連しており、不妊治療の担当者の悩みでもありますが、十分なホルモン治療や安静で防げる部分でもあり、担当医とよく相談しましょう。また、子宮外妊娠や内外同時妊娠も体外受精時増加するともいわれ、注意が必要です。



(4) 奇形児の誕生
 IVFのような人工的操作をうけて妊娠すると、奇形児の発生が増えると恐れている方も多いと思われますが、実際には全ての技術を通して奇形児の頻度の発生は増加しないというのが世界的な認識です。
 当然自然な形での妊娠成立でも奇形は発生(1.2%位)するので、奇形が存在しないということではありません。また、睾丸よ直接採取した精子の中には不妊遺伝子を有する症例があり、生誕した児が男児だと、この子が成人した後に不妊男性となる可能性もあると言われます。




Q14:トランスポートARTについて
 現在の不妊治療の成績は、全て生殖技術面にかかっています。しかし遠方の患者さんには連日や連続しての治療は困難なことも多く、治療をあきらめる方もあります。
 これらの方々のために当院では県内の不妊治療の出来る診療所と共同で、センターにて最も大切な卵の操作・管理(培養、顕微受精、凍結など)の部分を受け持ち、その前後の治療や採卵、妊娠の管理はかかりつけの近くのクリニックで受けられる方式(トランスポートART)を行っております。提携クリニック(現在の所10ヶ所)については当院に直接お問い合わせください。(ホームページ上にリストがあります)



Q15:卵子若返り法とはどんなことでしょうか?
 卵の細胞は年齢とともに老化し受精しにくくなります。高齢不妊女性の未受精卵の核を若い女性の核を抜いた細胞質の中に入れてやり、成熟したのち夫の精子と一緒にして受精させ移殖する方法で、米国ではすでに数十人の誕生があり、我が国でも検討中ですが、まだ実施例はありません。

核移殖技術による『卵子若返り』法



Q16:最新の不妊治療について教えて下さい。
 医学の中でも不妊症に関する研究と治療はここ20年の間に格段の進歩をとげた分野です。英国で世界初の体外受精児が誕生したのが20余年あまり前ですが、それを契機に世界中で多くの不妊治療の実績が積み重ねられてきています。体外受精(IVF)の普及がその契機となったわけですが、今では受精した卵の保存(凍結卵保存)、顕微受精(顕微鏡下で1つの卵に1匹の精子を細いガラス管を用いて受精させる法)、胚盤胞移殖(着床直前まで受精卵を培養し、胎児になる細胞と胎盤になる細胞まで分化した卵を子宮内に移殖する方法)、補助ふ化法(高年齢などで固くなった卵の外側を着床しやすくするため薄くする方法)などが臨床応用され、すでに多くの症例が妊娠、分娩しております。今後の問題として、現在国のレベルで検討されているのが、すでに諸外国では一般化している他人や兄弟の卵や精子を使って体外受精を行う方法(いわゆる借り腹、貸し腹と言われるもの)、高年齢の人の卵の細胞質を若い人の細胞質と入れかえて受精卵を作る方法(受精卵の若返り法)などが検討されていますが、倫理的な検討が遅々として進まない中で、医学面の進歩が先行しているような状況がみられます。いずれにしても生殖医学の進歩は不妊症の患者さんに、大きな希望を与えています。



Q17:不妊治療は自費と言いますが、どの位なのでしょうか?
 ほとんどの検査治療は健康保険が適用されますが、一部自費の部分があります。施設により大きなばらつきがあるようですが、当院での一覧表を示してあります。(2008年4月現在) 変更する可能性もありますので、確実なことは直接当院にお問い合わせください。(トランスポートの場合の分担等についてはふれておりません)

不妊外来での主たる自費料金(消費税分を含む)

◎体外受精・胚移殖(通常の場合)
採卵のみで終わった場合(卵回収できないとき)
105,000円
卵及び精子培養まで行った場合
105,000円
胚移殖まで行った場合
52,500円
最後までやればトータル
262,500円

注 夜間の注射は自己注射でも可能です。その場合は5,250円、点鼻薬で行う場合は2,100円です。

◎顕微受精
上の採卵時の料金に52,500円が追加されます。

◎胚盤胞、assisted hatching(AH)
各々31,500円の追加となります。

◎卵の凍結保存
1年間の保存管理料を含めて52,500円。融解して胚移殖を行うときには移殖料52,500円がそのときに必要です。移殖後の連日座薬による黄体ホルモンの料金は胚移殖の料金に含まれています。胚盤胞凍結は3本以上の時には1本当たり21,000円の追加が必要です。凍結精子(睾丸精子を含む)についてはご相談ください。

◎クロミッド周期法、フェマーラ採卵法
採卵の前まで保険適用があります。採卵時に卵が採取できなかったときには、その場でAIHに変更しますのでその料金も含んでおります。
採卵のみ(又はAIHを追加しても)63,000円、培養63,000円、胚移殖52,500円
凍結、顕微授精などの追加ARTのあった場合は別料金が追加されます。

◎人工授精(AIH)
1回当あたり精子検査、精子調整、子宮内注入法(IUI)、施行後の抗生剤投与を含め約14,000円。

◎その他ご注意
体外受精時のGnRH注射又は点鼻薬、排卵誘発のためのHMG、FSH、アンタゴニストなどの注射製剤は保険適用が認められていませんので原則自費になります。種類が多くありますので、主治医に確認してください。値段が高いから良い成績が得られるというわけではありませんので、自分に合う製剤と方法を主治医と相談しましょう。
※特殊例(2段階胚移殖、HRT胚移殖など)は上記料金でない場合もあります。
※途中で中止となった場合は料金の一部をお返しいたしますので、預り証は大切に保管してください。



Q18:着床の窓とは何でしょうか?
 最近の着床に関する研究で、着床するのには子宮内膜に最適の時期があり、受精卵の到着が、その時期と少しでもずれていると着床が難しくなるという報告があります。この最適の時期のことを『着床の窓』といいます。窓が開いている状態のときに、胚がランディングすれば着床することができますが、閉じてしまうと着床できなくなってしまうというものです。
 自然に妊娠するような人の場合は、この最適の時期が3〜4日と長い傾向にあります。不妊の人は窓が開いている状態が1〜2日と短い傾向にあり、また、加齢とともにこの期間が短くなるといわれています。
 体外受精あるいは顕微受精を行っても妊娠しない場合には、この着床の窓が閉じている時期に戻している可能性があり、この窓を少しでも長く開けておくことができれば、着床率はアップするにちがいないと研究者たちは考えています。現在、その研究が進められているところですが、いずれにせよ、『着床の窓』理論は、いままでブラックボックスといわれていた着床のプロセスの解明に一歩近づけるものとして、大いに注目されています。



Q19:ニ段階胚移殖法について教えて下さい。
 体外受精・胚移殖(IVF−ET)において、卵の受精後2日目と5日目の2回に分けて胚を移殖する新しい方法です。これは1回目(2回目)移殖の卵が、子宮内膜に作用して5日目に移殖される胚盤胞の着床するための子宮側の環境を提供し、たとえ2日目胚が着床に成功しなくても、5日目胚の着床に有利になること、一般に胚盤胞移殖時より多胎となる確率が少なく、たとえ胚盤胞まで胚が成育出来なかった場合にも、2日目移殖を行っているので胚移殖自体がキャンセルにならず、患者さんに受け入れられやすいなどの利点があると言われ、当院でも現在では約半分の移殖が胚盤胞移殖となっており、多数の妊娠例があります。しかし、2007年の移殖数制限より、この方法も40代以上などの限られた例でのみに行われる傾向があります。



Q20:クロミッド周期採卵法について
 最近、卵巣過剰刺激を防ぎ、多胎の可能性も少なくする目的で自然に近い周期で採卵が試みられるようになって来ました。生理3日目よりクロミフェン50mg1錠を連日(約8〜10日間)服用開始します。8日目より卵胞計測などを行って、十分な卵の発育が確認できてから、GnRH点鼻を両方の鼻腔に10:00PMごろ施行、35時間後位に採卵し、あとは通常の体外受精培養をして、分割したら卵を子宮内に戻す方法で、多量のhMG(FSH)刺激が不要で、OHSSの可能性が低いこと、ある程度の妊娠率が期待できることなどのメリットがあります。
 一方、採卵数が少なく約10〜30%位に卵回収が出来ないなどのデメリットもあります。2006年ごろより一部の機関ではアロマターゼ阻害剤(フェマーラ)を用いての採卵も行われています。Q37参照



Q21:最近話題になったOTU法とはどんな方法でしょうか?
 加藤修先生がはじめられた方法で、対象は機能性不妊で方法的には以前にも試みられた方法ですが、妊娠に成功したとのことで注目をあびています。まずQ15にあるように排卵刺激はゆるやかにクロミッドという服用薬を使って生理4〜12日の間に卵の発育(通常1〜2ヶ月)を認めたら、夜にGnRHの点鼻を自分で行って、35時間後位に採卵し、そのまま卵のまわりを整えてから子宮内に戻します。性交は前日に行っておきます。子宮内卵子⇒卵管⇒膨大部と通常妊娠とは逆のルートを通って受精し、再び又受精卵は子宮内に戻って着床するという方法です。この方法は追試で有効性がなく、現在はほとんど行われておりません。



Q22:女性へバイアグラを使用する治療法があると聞きましたが?
 バイアグラは男性の勃起不全症(ED)の治療薬ですが、血流改善薬ですので女性に使っても、子宮や卵巣の血流も改善します。従って、子宮内膜の発育が悪い(薄い)ために着床しにくい人には、これを用いることにより発育を改善し、着床条件を良くして、妊娠率を上げることが報告され、日本でも使用されており当院でも44例使用で13例(29.5%)に妊娠が確認されています(平成15年12月現在)。問題は量的に多量必要ですので、自費の価格が高めのことと、膣錠として使い、経口投与が原則できないことなどがありますが、着床不全の方には試みても良い方法と考えられます。(学会発表:第49回日本不妊学会を参照



Q23:ICSI法でも受精しませんでした。何か方法がありますか?
 通常の体外受精で受精卵が得られない場合に、一般的に受精障害と言われ、その場合にはICSI法が採用されます。このICSI法でも受精しない場合が数%にみられ、この原因の多くは精子に存在する卵活性化因子の欠乏や卵そのものの未成熟などが考えられます。この場合ICSI法後の卵を電気的に刺激することやCa-イノファーを使うことで、受精させることができる場合があり、当院でもこの方法での治療を行っております。



Q24:GnRHアンタゴニストという注射薬が体外受精に有効とのことですが?
 通常体外受精に使われている点鼻薬(スプレキュアなど)はGnRHアゴニストと言われ、ある期間使うことで、排卵誘発の自然のLH分泌を抑制しますが、このアゴニストに比べ、直接的に短期間にLH分泌を抑制できるのがアンタゴニスト(セトロタイドなど)注射薬で、もっぱら体外受精の卵胞発育刺激時に1〜3日間の短期に用いられ、その効果はアゴニストより著明です。すでに欧米では広く用いられており、日本でも治験は終了して、2006年10月より発売されています(保険は不可)。価額が高価であることが問題ですが、卵胞発育が良くない方や排卵が予定より早く起きてしまう方、点鼻薬が合わない方などには有効で、当院ではすでに8割の患者さんにこのアンタゴニスト法を採用しています。



Q25:不妊治療に良いサプリメントはあるでしょうか?
 多くの人がマカを使用していますが専門家の中ではその評価は一定していません。私が勧めるのは『血流を良くする食品やサプリメント』です。一般に女性のホルモン的な不調の背景には、血流の乱れ(いわゆるドロドロ血)の方が少なくないようです。従ってビタミンCやEを多く含む食品や、最近では血流改善が著明な大豆蛋白であるイソフラボンが効果的に良いようです。サプリメントは薬ではありませんので、中には必ずしも良い作用のものばかりではありません。そのためにサプリメント使用にあたっては必ず主治医と相談してから使用しましょう。また、禁煙や不規則な食生活の改善などの一般的なライフスタイルを変えることも必要です。(Q27参照)



Q26:血のめぐり(血流)と不妊症は関係ありますか?
 あります。一般に日本人女性は冷え性の方が多くその根本には血流循環不全、すなわち血のめぐりが悪く、特に不妊症患者にその傾向は著明です。漢方では”血虚”と”お血”が有名ですが、血流が良くなると妊娠率が上昇することが明らかです。現在では食事や治療で血流が良くなったかどうか(サラサラ血)、検査(下図)でチェック出来ますので、一度検査をした方がよいでしょう。

MCFAN

上記右図のようにヒトの細かい血管を血液が流れる状態を再現して、ドロドロ血を目認できます。



Q27:不妊治療中に日常生活で女性側が気をつけることがありますか?
 いちばん大切なのは、正常な排卵ができるように「規則正しい生活」をおくることです。喫煙やアルコールの飲みすぎはホルモンのバランスを悪くするので節制しましょう。特に、喫煙はダイオキシンなどの環境ホルモンを多量に取り入れているのと同じですので、禁煙してください。そして環境ホルモンにさらされないような生活をおくることです。環境ホルモンは精子の製造能力や卵子の質に悪影響を及ぼし、妊娠しにくくすると考えられています。また感染症、特に性感染症にかかると妊娠しにくくなるので、予防的で清潔な生活が大切です。また、ストレスは脳のホルモン中枢に直接影響して血流を悪くすることでマイナスに作用するため、過剰な心理的ストレスも不妊の原因になります。
 食生活も重要です。カロリーは低めに、栄養素は充分にとり、油ものや塩分は控えめにして野菜、豆類、きのこ類などを増やしてください。



Q28:不妊症の予防はできますか?
 不妊症は生活習慣病とも言え、日常の生活に注意をすれば不妊に悩む人を1/2に減らすことが出来ると言われています。喫煙は男女ともに性機能を低下させ、妊娠したら必ず禁煙しなければならないので、喫煙している方は必ず禁煙しましょう。まず、喫煙をやめることです(Q29参照)。また、性行為感染症(STD)に罹患しないように、かかった時には完全に治療して完治させることです。また、肥満するとホルモン異常⇒排卵障害に結びつくので、太りすぎにならないよう体重管理には十分気をつけて下さい(Q30参照)。また、女性の年齢と妊娠のしやすさは比例しています。人生設計の中で挙児を希望する場合は、早めの不妊の検査治療を受けるようにしたいものです。



Q29:特殊不妊治療に対する公的補助は?
 2004年より、各県(政令指定都市、中核市はその市)が、体外受精、顕微授精(特定不妊治療)への助成が始まっています。
 1年度あたり上限10万円で、通産2年間まで支給されます。神奈川県の例では(横浜、川崎、横須賀、相模原を除く)
  (1)特定不妊治療以外では妊娠の見込みがない
  (2)夫婦の前年の所得(収入ではない)が650万円未満
などの要件を満たせば、受けられます。指定機関がありますので、各県、各市(東京都の場合は都庁)の窓口で確認してください。



Q30:不妊に伴うインシュリン抵抗性とは?
 排卵がうまく行かない症例(特に多のう胞性卵巣症候群(PCO))の場合に、将来、2型糖尿病になりやすいインシュリン抵抗性という状態が存在し、これを治療することによって容易に排卵することが知られています。検査は血液のインシュリン値と血糖値をチェックすることで判明します。
 また、メトフォルミンと言う比較的安全な治療薬によりインシュリン抵抗性を低下させることが出来ます。PCOと言われており、肥満が根底にある不妊の方は一度チェックを受けられた方がよいでしょう。



Q31:喫煙と不妊の関係は?
 2004年にアメリカ不妊学会(生殖医学会)は下のような会告を出して、患者教育をするように指示していますので参考にしてください。

題名:喫煙と不妊
女性の場合
  1. 喫煙者では非喫煙者と比べて妊娠成立までが平均2.27年遅れる
  2. これは1日の喫煙本数と比例する
  3. 卵の質が採卵時期明らかに低下している
  4. 喫煙で遺伝子損傷のため胎児の染色体異常が上昇、流産率、膣炎の頻度そこから引き起こされる妊娠時の子宮内感染、子宮外妊娠頻度の上昇が3.5倍になる
  5. 母親が1日10本以上喫煙すると、生まれてくる新生児が男児だとその子の精子製造能力が将来低下する
  6. 体外受精では喫煙者は、非喫煙者と比べてIVFの回数が約2倍必要となる
  7. 高齢でかつ喫煙者の場合はより卵のダメージが大きい
男性の場合
  1. 喫煙は明らかに精子機能を低下させる
  2. 受動喫煙(自分の喫煙した煙が周りの人に影響を与える)の害が大きい
これらの事実は医学的に証明されている(evidence based medicine)
当院の患者さんについても、喫煙者の体外受精成功率を報告してあり、明らかに喫煙は成功率を下げます。(学会活動報告第19回神奈川母性衛生学会を参照)



Q32:レーザー顕微授精装置とはなんでしょうか?
 最も頻用されているのは、従来、顕微鏡下で行われていた手動で、酸などの化学物質を用いて行っていたアシストハッチング(Q9参照)を、ダイオードレーザーを用いて、確実に容易に行うことが出来、又培養士の経験的手技にも左右されなく、酸からの汚染も防げるため、欧米はもちろん日本でも採用するクリニックが増えております。アシストハッチング以外にもその応用は拡がりつつあり、将来はその利用はARTでは必須となる可能性があります。不妊センター紹介欄にその実際を示しております。



Q33:受精卵診断はなぜ必要なのですか?
 流産をくり返したり、前の妊娠で胎児の染色体異常などが見られた時など、以後の妊娠に備えて、その原因を究明するために行われます。受精した卵の一部(割球)の1〜2ヶを顕微鏡下で取り出して、その中の染色体や遺伝子を分析して、正常と診断された受精卵のみを子宮内に移殖することで、次回の流死産や胎児異常発生を防ごうとする方法ですが、日本では研究の領域とされ、一部の施設のみが学会認定のもとに行っています。しかし、アジアの国々では米国、オーストラリアなどの施設が進出し、日本からの受診者もあると言われています。



Q34:受精卵診断が認められたとの事ですが?
 日本産婦人科学会では、従来「重篤なる病気:たとえば筋シストロフィー症など」に限っていた受精卵診断を認めることを決めました。これは習慣性流産のうち、相互転座とよばれる染色体異常を伴う流産例に対しては、これを重篤なる病気として認定し、体外受精で得られた受精卵のうちから、1〜2個の割球(細胞)を取り出して、その細胞が正常染色体なら移殖を行って流産を防ごうとする方法です。
 まだ種々の問題はありますが、2006年度中には施行される方向であり、習慣性流産のうち10%くらいを占めるこれらの患者さんにとっては朗報ともいえます。一方では、この方法論に反対する意見も少なくなく、慎重に行われる予定ですが、日本ではすでに神戸市の大谷医師によって20組以上の妊娠成功例が報告されています。



Q35:喫煙は体外受精にどんな影響を与えますか?
 Q31ですでに述べていますが、当院の看護師が中心になって、2005年度に1年間かけて調査した結果を示します。この1年間に採卵した372例のうちきちんとしたアンケートが取れた338例について、その後の妊娠成立の有無について検討した結果、
      (1)女性の喫煙がある群の妊娠・・・18.1%
      (2)6ヶ月未満の喫煙群・・・28.8%
      (3)喫煙なしか、6ヶ月以上禁煙群・・・37.2%
と明らかに、タバコより離れている群の妊娠率は有意に高く、また男性の不妊症でも喫煙習慣がない方4の乏精子症は33%なのに、喫煙群では重症例の64%を占める。したがって約半分(46%)の患者さんが顕微授精(ICSI)を受けることとなっています。日本では先進国の中でも喫煙率が高いのですが、不妊症、特に体外受精を受ける場合には、必ず禁煙を男女ともにしておきましょう。妊娠すれば必ず胎児含め夫婦とも禁煙しなければならないのですから。



Q36:男女産み分け法について教えてください
 正確な男女産み分けについては、PGOと言われる着床前の受精卵診断が必要ですが、日本では学会の規定で行えず、学会に属さない一部の機関のみでしか行えません。パーコールで遠心分離法X・Y精子を分離する方法もありますが、平成6年に学会が禁止しましたが、2006年に学会が黙認すると変化し、今のところこれを用いて男女産み分けを行っている医療機関もあります。しかし、この方法も80%位の成功率と言われています。また従来からの方法として、女の子にする精子(X精子)は酸性に強く、生命力が長いので、排卵日の2日間に性交し、アルカリ化をさけることが重要です。一方、男の子の精子(Y精子)はスピードが速いが持久力は少ないタイプで、排卵日当日の性交が良いと言われています。また女性側を上記のように酸性で保つか、アルカリ性に変化させるかなどを利用するわけですが、この成功率は50%(結局やってもやらなくても変化無い)と考えられています。



Q37:フェマーラ(レトロゾール)での排卵刺激法とは?
 フェマーラは日本では閉経後乳癌治療剤として使われていますが、これを月経閉経後早期(3日目)より投与すると、体の中の卵巣刺激ホルモンは促進され、また感受性を高めるため、海外や日本でも一部の医療機関では排卵刺激剤として使われています。クロミフェンと比較して、子宮頚管粘液や子宮内膜を薄くしないという長所があるため、クロミフェンが適さない例でも良く、PCOや内膜症のような他の因子の合併例でも良い成績が保たれ、また単一排卵のことが多く、多胎の予防も可能といわれています。またその効果も1日半くらいです。5日間のみの使用なので、この方法で妊娠しても胎児には副作用が無いと言います。しかし、わが国では自費(7,000〜8,000円位)となります。当院でも数十例に同意を得て使用していますが、感触としては良いようです。



Q38:公的不妊治療補助がかわったようですが?
 平成19年4月より、国と地方自治体による特殊不妊治療事業がやっと改善され、以下のような形となりました。例として相模原市の助成事業を示します。

詳細は相模原市ホームページをご覧ください。


平成23年4月より、初年度のみ3回の助成金が使用できます。
平成23年4月以降に治療が終了し、1年目の申請をした人から、助成回数を拡充します。通算での助成年数・回数は、今までどおり5年間・10回までです。

対 象:体外受精・顕微授精を受け、治療を終了した夫婦(所得制限あり)
※治療終了とは、受精卵を体内に戻したときか妊娠の有無が確認できたとき、医師の判断でやむを得ず治療を中断したときです。
※年度の判定は治療終了日が基準です。 ※所得制限や申請期限など詳しくは、相模原市ホームページの「暮らしの情報」−「健康・衛生・医療」−「医療」をご覧になるか、お問い合わせください。

申し込み:健康企画課、各保健センター・保健福祉課にある申請書と必要書類を、治療終了日の翌日から60日以内に各担当課へお願いします。

お問い合わせ:健康企画課 TEL:042-79-8345




Q39:Pillによって良質卵を得る方法があるとのことですが教えてください。
 年齢の進行とともに、また卵巣機能の低下傾向のある患者さんには、時に卵巣刺激のスタート時に、卵質がそろっていない症例や周期が少なからずあり、その場合には種々の工夫がされております。その一つの方法が、採卵の前周期にホルモン剤であるPill(経口避妊薬)を使う方法で、Pillに含まれる女性ホルモン(主としてFSH)をコントロールしようとする方法で、通常生理5日目から3週間服用とか、排卵後に10日間服用する方法などがあり、最近では一相性の低用量ピルが使われる場合もあります。前回採卵時に反応が良くなかったり、前周期のチェック時にFSH値が高かった場合などには試みてもよい症例があり、一度主治医と相談してみてください。



Q40:リコンビナントホルモンが使用可能となったと聞きました。
 従来、卵巣の卵を発育させるホルモンとして、HMGとしてヒュメゴン、フェリチノームなどが使用されていましたが、すでに欧米では純度の高いr-FSHが使用されていました。これは従来のHMGがヒトの閉経期婦人の尿を集めて、精製したホルモン剤であったものを、最近の遺伝子技術を用いて作られた製品であり、リコンビナント性腺刺激ホルモン(r-FSH)と呼ばれています。製品の力価(ホルモンの強さ)が一定であり、純度が高く皮下注射も可能であるため、欧米では自己注射用としてもっぱら使用されており、日本でも昨年末より使用可能となり、一部は保険使用可能となっており、段々とこれらの製品に、日本でもシフトしていくことが考えられますが、まだ値段も高くこの面での改善が望まれます。



Q41:胚移殖数が制限されるそうですが?
 IVF-ET(ICSIを含む)では、従来より多くの受精卵を子宮に戻すと、妊娠する率が高くなることが知られていましたが、その結果多胎妊娠の増加も指摘されてきました。日本産婦人科学会では、移殖数を3個までとしてきましたが、双胎率があまり減少しないため、今年4月より2個に制限する方向です。すでに日本生殖医学会(旧不妊学会)では、2007年4月に36歳未満は良好胚を1個、最大限3個までと会告で示しており、多くの施設では1個移殖(SETという)の流れになっております。当院でも昨年度よりSETを開始しましたが、この方法でも双胎は0にはできないこと、高年齢(特に40歳以上)の妊娠率は明らかに低下していること、IVF以外の通常治療での多胎は防げないことなどが問題点としてありますが、日本でも胚移殖数制限は今年から本格的になっていくと考えられます。



Q42:最近、男性不妊の新しい薬物療法がありますか?
 2006年より男性不妊の原因のうち、下垂体ホルモン低下による精子製造能力低下症(低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症)に対して純粋な性腺刺激ホルモン(リコンビナントFSHといわれる)が保険で使用可能となり、静止画精液に存在しない無精子症のうちの一部の例に非常に有効であることが報告されてきました。当院でもこの注射薬を使用してICSIを併用して妊娠に成功した例を2007年10月に報告しています(学会活動参照)。この注射は自己注射が可能で、かつ有効率も70%以上あることで注目っされております。健康保険も効き、一部の企業健保では治療への補助制度もあり、忙しい男性患者にとっては有難い方法ですが、数ヶ月〜数年という長い治療期間が必要なのが難点です。しかし、無精子症のみでなく、数の少ない乏精子症の方にも使える場合もありますので、担当医とよく相談してください。



Q43:体外受精で生まれた子供の追跡調査をするそうですが?
 現在、特定不妊治療に対して、公費(国と県市町村などが半分づつ)での補助を行っていますが、同時にこの公費負担でIVFを受けた方の情報は、患者さんの分は県市町村へ、診療情報は日本産婦人科学会へとすべて報告されるシステムが2007年度より全面的に行われております。したがって夫婦の個人情報は一元的に厚労省と学会が管理していると思われます。詳細は不明ですが、この中から厚労省の管轄化にある国立成育医療センターがIVF出生児を数千例について、小学校入学時くらいまでフォローするとの報道があります。世界の各国でもこのような多数例の報告は皆無であり、本当に行うことができるのか、また個人情報のこともあり困難な点も多くあるようですが、あくまで両親の了解など行うことはできないので、参加するときには十分検討して同意しましょう。



Q44:姉妹間での卵移殖による妊娠があると新聞で見ましたが?
 提供卵子での体外受精の事と思います。JISARTという不妊治療グループで行なわれ、2例の若い年齢なのに排卵が起きない症例(早発閉経と考えられる)が友人や姉妹から卵子の提供を受け、夫の精子と体外受精させて妊娠に成功したと報告(2008年6月)。このような例には学会が日本学術会議が検討中のため行なわないよう要請していたが、結論が出ないためにJISARTとして実施を認め妊娠したという。これにより実質的には日本でも提供卵子による不妊治療を行なう施設も増加することが考えられます。



Q45:最近、高年齢の治療例が多いとのことですが、その成績は?
 当院の症例からは2005年度には排卵例の15%が40歳代でしたが、2007年度には32%と3人に1人は40歳のART不妊治療となっています。妊娠率は約8〜15%ですが、40,41歳はまだ良いのですが、42歳以上になると4〜5%となり、さらに流産率も40%と40歳未満と比較すると、明らかに妊娠率も低く、流産率は高く、その対応には苦慮する例が少なくありません。出来れば30歳代に不妊治療はしておくことが結果的には最良です。勿論、40歳代であっても、私達は最善を尽くして治療を行ないます。



Q46:最近不妊治療にDHEAというサプリメントが良いと聞きましたが?
 DHEAはデヒドロエピアンドロステロンというヒトの副腎皮膚というところから分泌される弱い男性ホルモン様作用を有する物質で、20歳頃にピークがあり加齢とともに低下し、特に女性においてその減少が著明であることから、その補充が抗加齢作用を有する事が知られ、欧米では一般のサプリメントとして販売されていますが、日本では市場では手に入りません。そのホルモン作用は多様で更年期以後の女性や高齢男性に好んで用いられていましたが、卵巣機能の低下のある方、高年齢(40歳以上)の不妊症に対しても有効であるとの報告が多数発表されるようになってきております。当院でも平均6回の採卵でも妊娠しないIVFの患者さんに、このDHEA75mgを1日分として2ヶ月間投与してから、採卵を行なったところ、11例中3例に妊娠が成立。この時には、その前周期と比べて良好卵数の増加など、明らかな改善が認められました(詳細は不妊学会発表の項を参照)。DHEAは2ヶ月分でも6,000円位と安価で、反応の悪い不妊IVF患者さんには用いても良いと考えられます。また、米国NIHの情報では男性のEDにも有効との報告もあります。



Q47:ヒューナテストの意義について
 ヒューナテストとは、性交後の子宮頚管(子宮の入り口部分)の粘液中に精子が存在するか否かを見る検査で、50年以上も前から行われております。粘液中に10匹以上の運動精子がいれば陽性(1匹でも存在すると陽性と診断する医師もいます)、存在しなければ陰性とする検査ですが、その判定や、性交後の時間(性格には2時間後)に種々の問題があり、精液検査の代用にもなると考えている方もありますが、現在ではその意義は疑問視されており、当院では全員には行っておりません。この検査に変わるものとしては、ミューラークロツロック検査があります。これは体外に取り出した排卵期の頚管粘液と精子をスライド板上で接触させ、顕微鏡下で精子の侵入をみる方法があり、抗精子抗体検査を施工する前に行われることがあり、患者さんの心理的負担が少ないので、当院ではこれを採用しています。



Q48:胚培養士とはどんな事をするのですか?
 生殖医療胚培養士(エンブリオジスト)は現在のARTには欠かせない存在であり、生殖医療の成績を左右するチーム医療の一員です。当院の新進の培養士である、小峰佳奈子さんが母校の北里大学獣医学部のホームページの中で「卒業生の声」で詳しく述べていますのでご参照ください。



Q49:ICSIより進んだIMSI法とは?
 IMSIとは、通常のICSIより高倍率の顕微鏡下で観察し、より形の良い精子を選んで採取して、ICSIを実施する方法であり、射出された精子の他に、TESEなどの精巣から直接採取した精子についても行うことが出来る。通常のICSIの約10倍強の拡大が可能のため、精子頭部の観察ができ、特にクレータと呼ばれる凹みが大きいものは、精子の遺伝子に異常がある可能性が大きいので、これを避けて凹みが無いか、小さい精子を選んでICSIを行う方法です。これによる妊娠率の上昇や流産率の低下、胚盤胞までの発育割合の上昇などが報告されている。2008年7月より、当院でもICSIの適応のある例については、このIMSI法を行っています。



Q50:自然周期採卵について
 自然周期採卵とは、クロミフェンやhMGなどの排卵刺激薬を用いないで採卵し、体外受精で精子と培養した受精卵を戻す方法です。当初はPCOなどの患者さんに未熟卵のうちに採取して、体外で卵を成熟させてから体外受精を行う方法(IVMと言います)で行われていましたが、最近大手のKクリニックでは、全くの自然周期での排卵前熟成卵(通常は1個)を採取、受精させ戻す方法が行われています。より自然に近いとのことで、共感するむきも少なくないようですが反対論もあります。体外受精の歴史をみると、最初の時代にはすべて自然周期での採卵で行っていたのであり、その妊娠率の低さ、効率の悪さなどから、現在の方法へと少しずつ進化してきたわけですから、時代を逆行するとの批判もあります。また自然が良いといっても、多くのARTの患者さんは自然妊娠が出来ないからARTへと治療を進めて来た事を考えると、この批判にも一理あるかとも考えます。まだ長期の成種が出ていませんが、少なくともある年齢(35歳)以上の方には、今のところお勧めは出来ないと思います。



Q51:レーザーによる不妊治療について
 レーザーと言うと、一般的にはレーザーメスを考えますが、これは高反応レベルレーザーと言って、照射をする部分の破壊を目的としています。一方、不妊領域で使用されるのは、低反応レベルレーザーで、当初は痛みや傷の治癒促進などに用いられ、その効果は血流改善であることが明確になっており、男性不妊患者の精子数の増加や閉経婦人の月経再開などから不妊治療への応用が試みられてきた。すなわち、メスのレーザーとは異なり、低周波レーザーは全身の血行を改善し、卵胞・卵子のレベルでの新陳代謝活性化が考えられている。確かに当院でもこの低周波レーザーを行なう症例での子宮血流を測定すると著明な血流増加がみられ、同時に患者さんの冷え性や便秘なども改善しており、現在そのデータをまとめている。

当院のレーザ装置
当院のレーザ装置



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